http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=88728
1 事案の概要:
「本件は,被告との間で期間の定めのない労働契約を締結し,被告の設置する大学の教員として勤務していた原告らが,被告が原告らの所属していた学部の廃止を理由としてした解雇が無効であると主張して,被告に対し,労働契約に基づき,それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,解雇後の月例賃金,夏期手当,年末手当及び年度末手当である原告Aにおいて別紙①請求一覧表1の,原告Bにおいて別紙①請求一覧表2の,原告Cにおいて別紙①請求一覧表3の各支給日欄記載の日限り各金額欄記載の各金員並びに各金員に対する各起算日欄記載の日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。」
2 本件解雇の効力の判断枠組み
「本件解雇は,淑徳大学の国際コミュニケーション学部の廃止に伴い,同学部に所属していた原告らを解雇するものであって,原告らに帰責性のない被告の経営上の理由によるものである。そうすると,本件解雇が解雇権を濫用したものとして無効となるか否かは,人員削減の必要性,解雇回避努力,被解雇者選定の合理性及び解雇手続の相当性に加え,本件においては,原告らの再就職の便宜を図るための措置等を含む諸般の事情をも総合考慮して,本件解雇が客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当と認められるか否か(労働契約法16条)を判断するのが相当である。 」
→学部廃止に伴う大学教員の整理解雇事案。
①人員削減の必要性についての判断
・不合理とはいえないが,必要性が高度であったとはいえない。
②解雇回避努力等についての判断
・努力を尽くしたとはいえない。
③解雇手続の相当性
・原告らに対する説明や原告らとの協議を真摯に行わなかった。
〇小括
「被告が国際コミュニケーション学部の廃止を決定したこと自体を不合理ということはできないものの,被告の財務状況が相当に良好であったことや,同学部の廃止と同時期に人文学部の新設が決定され原告らの担当可能な授業科目が多数新設されたことによれば,国際コミュニケーション学部の廃止に伴う人員削減の必要性が高度であったとはいえないというべきであり,それにもかかわらず,被告は,人文学部への応募の機会を与えず,個別に相談したいなどと述べて,本件各労働契約の存続に期待を持たせる言動に出て,結果的に解雇回避の機会を喪失させたばかりか,原告らを学部に所属させずに他学部の授業科目を担当させるなどの解雇回避努力を尽くすこともなく,原告らに対する説明や原告らとの協議を真摯に行うこともしなかったことなどの前判示に係る諸事情を総合考慮すれば,本件解雇は,解雇権を濫用したものであり,社会的相当性を欠くものとして無効である。 」
→無効