http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89095
・判示事項の要旨:
「被告人が,元交際相手である被害者と被告人の長年の親友が男女関係にあることを知ったことから,被害者を殺害して自分も死のうと決意し,駐車場に駐車中の自動車内において,右手に持っていた包丁で左胸を突き刺したが,被害者に加療約1か月を要する左前胸部刺創等の傷害を負わせたにとどまった殺人未遂の事案について,中止未遂の成立を否定し,被告人に懲役4年6月を言い渡した事例」
・弁護人の主張:
「弁護人は,被告人が自ら警察官に対して被害者を刺したことを申告した上で救急車を要請した行為は,被害者の死亡という結果の発生を防止するに足りる真摯な行為に当たり,中止未遂が成立する旨主張する。」
・裁判所の判断:
「被告人は,本件犯行後,約1時間半もの時間,呼吸が弱まっていく被害者の様子を目にしながら,助けることをせず,被害者の死を見届けて自分も死ぬ場所を探しながら,包丁が左胸部に深く刺さったままの被害者を自動車に乗せて連れ回した後に,被害者の「ごめんね。」といった発言等から翻意して被害者の命を助けることにしたものである。翻意するまでにあまりに時間が経っており,その間に被害者が死亡する危険性がさらに高まったのであり,被告人の行為があったとしても,被害者が最終的に一命をとりとめたのは,その他の要素に助けられた面もある。このような状況も踏まえると,少し離れた交番に行き,警察署に電話を掛け,救急車を要請した程度では,被害者の死亡という結果の発生を防止するに足りる真摯な行為と評価することはできない。
以上によれば,本件について,中止未遂は成立しない。」
*中止未遂の成立は否定されましたが、「中止未遂が成立するものではないが,被告人が遅ればせながら被害者を助けようと思い直し,警察に電話をして犯罪を申告し,救急車を要請したことをきっかけに,幸いにも被害者の命が助かったものであること」、「本件について自首が成立すること」などが量刑上考慮されています。