弁護士伊藤祐貴@台東区・上野御徒町のブログ

第二東京弁護士会所属。労働問題(解雇無効、残業代請求、退職代行等)、離婚・不貞慰謝料請求、相続、遺産分割、景品表示法、民事、刑事、少年事件など。

性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件(最決令和2年3月11日)

https://kanz.jp/hanrei/detail/89311/

 

・判示事項:「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項2号と憲法13条,14条1項,24条」

*上記規定は,憲法13条,14条1項,24条に違反しない。

 

・判示:

性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「現に婚姻をしていないこと」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項2号の規定は,現に婚姻をしている者について性別の取扱いの変更を認めた場合,異性間においてのみ婚姻が認められている現在の婚姻秩序に混乱を生じさせかねない等の配慮に基づくものとして,合理性を欠くものとはいえないから,国会の裁量権の範囲を逸脱するものということはできず,憲法13条,14条1項,24条に違反するものとはいえない。」

 

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条は,性同一性障害*1の性別の取扱いの変更の審判の要件として,

1 20歳以上であること

2 現に婚姻をしていないこと

3 現に未成年の子がいないこと

4 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に各状態にあること

5 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること

を求めている。

本決定は,このうち,「現に婚姻をしていないこと」が憲法憲法13条,14条1項,24条に違反するものとはいえないと判断したものである。

 「現に」婚姻していないことを要求するものであるので,過去に婚姻をしていても離婚により婚姻が解消されていれば性別変更は可能であるし,性別変更後に婚姻することは可能であると解釈することができる。そうであるとしても,当該要件のため,性別変更をするのために離婚(非婚)が強制されているともいえる。

 現行法上,同性婚は認められていないから,それと整合させるための要件と考えられる。将来,同性婚が認められる制度が成立した場合には,現に婚姻している性同一性障害者と現に婚姻していない性同一性障害者とを合理的理由なく別異に取扱いことになるから,少なくとも改正が検討されるべき要件であると考える。

 

*1:同法2条「この法律において「性同一性障害者」とは,生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず,心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち,かつ,自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって,そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。」