弁護士伊藤祐貴@台東区・上野御徒町のブログ

第二東京弁護士会所属。労働問題(解雇無効、残業代請求、退職代行等)、離婚・不貞慰謝料請求、相続、遺産分割、景品表示法、民事、刑事、少年事件など。

婚姻費用分担審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件(最決令和2年1月23日)

https://kanz.jp/hanrei/detail/89187/

 

・判示事項:「婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚した場合における婚姻費用分担請求権の帰すう」

 

・判示:

民法760条に基づく婚姻費用分担請求権は,夫婦の協議のほか,家事事件手続法別表第2の2の項所定の婚姻費用の分担に関する処分についての家庭裁判所の審判により,その具体的な分担額が形成決定されるものである(最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁参照)。また,同条は,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないことは明らかである。しかし,上記の場合に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから(前掲最高裁昭和40年6月30日大法廷決定参照),夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解するのが相当である。このことは,当事者が婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の請求をすることができる場合であっても,異なるものではない。 」

「したがって,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これに
より婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない。 」

 

*婚姻費用分担請求調停を申し立てた後,同調停が成立しないうちに,離婚が成立しても,離婚までの間の婚姻費用の請求権が当然に消滅するわけではない。

*「抗告人と相手方との間では,平成30年7月,離婚の調停が成立した。同調停においては,財産分与に関する合意はされず,いわゆる清算条項も定められなかった。 」とされているので,本件では婚姻費用等の紛争の種を残したまま離婚だけ合意に至って調停を成立させたやや特殊なケースと思われます。離婚調停の調停条項で,婚姻費用の清算についても定めて,婚姻費用分担請求調停は取り下げるという処理もありえたのではないかと考えます。